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■ ウッディエンス メールマガジン         2025/5/09 No. 068
☆★ 木材の科学は日進月歩! 日本木材学会から最新の情報をお届けします
‥・* 発行 日本木材学会広報委員会
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                 日本木材学会広報委員会委員長 玉 井  裕
  ■ 本号の目次 ■
 本号は、組織と材質オンラインセミナーおよび日本木材学会賞をはじめとした各賞受賞者の
コメントをご紹介します。
ぜひご覧ください。
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◆2024年度 組織と材質オンラインセミナー
└-組織と材質研究会 山下香菜(森林総合研究所)
 
 組織と材質研究会では、2024年度から高田直樹氏(森林総合研究所森林バイオ研究センター)
の企画によりオンラインセミナーを始めました。主旨は、(1)各研究者のこれまでの知見や最新
成果を共有することで、研究者間の共同研究やネットワーク構築を進める、(2)博士課程に進む
学生さんが少なくなってきた状況で研究の面白さや未解明の課題を共有する、(3)若手からシニ
アまでざっくばらんにディスカッションできる場所を創出する、の3点です。
 第1回目(2024年8月2日)は、相蘇春菜氏(山形大学)による「傾斜下側にあて材を形成す
る広葉樹から考える樹体支持メカニズム」。広葉樹は一般的には傾斜の上側に引張あて材を形
成しますが、クチナシは傾斜の下側に圧縮あて材様の木部を形成します。人為的に傾斜させた実
験で傾斜角度が大きいほどS/G比が小さくなり、リグニンに質的な変化が生じたことや、メチル
化熱分解ガスクロマトグラフィでフロログルシン塩酸呈色反応と一致する結果が得られたことが
示されました。また、傾斜下側にあて材を形成する他の樹種との相違点が紹介され、あて材の多
様性と面白さを共有するセミナーとなりました。
 第2回目(2024年9月27日)は、工藤佳世氏(秋田県立大学)による「落葉広葉樹における孔圏
道管の形成機構」。落葉性広葉樹環孔材の主要な通水経路である孔圏道管は、大径であるため通水
効率が良い一方で、凍結融解ストレスにより一年で通水機能を失うことから、環孔材樹種の生存
には、毎年春先に孔圏道管が確実に形成されることが必要不可欠です。各種顕微鏡を用いた春先
の孔圏道管の形成過程と葉のフェンロジーのモニタリングや、休眠期の樹幹の加温・摘芽・オー
キシン塗布の複合処理実験を行った結果、春先の気温の上昇が孔圏道管形成開始の直接的な引き
金であることを実験的に証明されたことが紹介されました。また、芽や葉の成長は、孔圏道管形
成開始には必要不可欠ではないものの大径の道管形成を継続させるために重要であることや、オ
ーキシンが孔圏道管の数やサイズ制御に関わっている可能性が示されました。
 第3回目(2024年11月29日)は、小嶋由香氏(東京農工大学)による「キノコが有する結晶性セ
ルロースに特異的に結合するタンパク質」。木材腐朽担子菌は、種々の分解酵素を利用すること
で、木材中のセルロースを分解しています。それらの分解酵素にはセルロースに吸着する構造
(CBD)が付加している場合があります。小嶋氏らによって、これまでに知られていたCBDとは全
く異なる構造と特性を持つCBDを発見されたことが紹介されました。既知のCBDはどのような形態
のセルロースにも吸着しますが、この新規のCBDは天然型の結晶性セルロースに特異的に吸着する
ことができます。新規CBDを利用することで、木質バイオマス変換においてボトルネックとなって
いる難分解性の結晶性セルロースの分解効率を大幅に上昇させることができると期待されます。
 いずれのセミナーにおいても、学生さんも含めて活発な議論が行われました。2025年度もオンラ
インセミナーを継続する予定ですので、ぜひご参加下さい。
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2024年度
◆第65回日本木材学会賞
Hwang Sung-Wook 氏(韓国・慶北大学校 農業科学技術研究所)
「機械学習を用いた木材の識別と特性評価に関する研究」

◆第36回日本木材学会奨励賞
堀山 彰亮 氏(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)
「木材の構造と物性の相関に関する基礎研究」

◆第33回日本木材学会地域学術振興賞
荒木 博章 氏(宮崎県木材利用技術センター)
「熊本県、宮崎県における地域材活用に向けた研究開発及び技術支援の取り組み」

河村 進 氏(島根県産業技術センター)
「木質材料を用いた建築工法の開発及び高品質な帯鋸の性能評価による
 学術振興と地域木材産業活性化への貢献」

藤澤 泰士 氏(富山県農林水産総合技術センター木材研究所)
「地域材の利用促進に向けた実用技術の開発と木材関連産業活性化への貢献」

◆第26回日本木材学会技術賞
須原 弘登 氏(宮崎県木材利用技術センター)
川波 宇澄 氏(株式会社黄河)
片岡 鄕 氏(アットアロマ株式会社)
深津 信一 氏(株式会社深津製材所)
「製材乾燥機排蒸気からの精油回収装置の開発及び回収した精油の用途開発」

◆第1回日本木材学会優秀学生賞
多賀 勇亮 氏(岐阜大学大学院 連合農学研究科
岐阜大学・インド工科大学グワハティ校国際連携食品科学技術専攻)
「植物由来色素構造及び色調変化メカニズムの解明」

山本 千莉 氏(京都大学 生存圏研究所)
「イネ科植物における細胞壁架橋構造の生合成機構の解明と代謝工学」

◆第18回日本木材学会論文賞
《木材学会誌》論文賞
「深層学習を用いた画像解析に基づくスギ材の乾燥割れの定量化手法」(70巻3号)
村野 朋哉 氏(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
渡辺 憲 氏(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
藤本 登留 氏(東北農林専門職大学)
松元 浩 氏(石川県農林総合研究センター 林業試験場)

◆《Journal of Wood Science》論文賞
「Three-dimensional modeling of moisture transport in wood using near-infrared
hyperspectral imaging and X-ray computed tomography in conjunction with finite
element analysis」(70巻Article number 9)
Zeng Wenpeng 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)
藤本 高明 氏(鳥取大学 農学部生命環境農学科)
稲垣 哲也 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)
土川 覚 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)
馬 特 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)

◆第2回日本木材学会国際交流奨励賞
大塚 亜希子 氏(秋田県立大学)
「セルロース繊維混合エポキシ樹脂を用いた部材補修に関する研究」
(第18回世界地震工学会議)

髙田 昌嗣 氏(東京農工大学)
「さまざまなリグノセルロース由来のMWLにおける発光団の不均一分子量分布」
(46th Symposium on Biomaterials, Fuels, and Chemicals)

◇受賞者のうち、数名の方からコメントが届いておりますので、
下記のリンクからご覧ください。
受賞者の方からのコメント
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 ウッディエンスでは学会賛助会員の企業を対象に5行広告を設けていますので、皆さま
のご利用をお待ちしております。
 詳細は下部にございますのでご覧下さい。

★★★
 広報委員会では各研究会や支部大会等の報告をウッディエンスに投稿していただくよう
お願いしております。幹事の方はお忘れなきようお願いします。原稿は随時受け付けてお
りますので、よろしくご協力ください。

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■日本木材学会の刊行する学術雑誌はインターネットで読むことが出来ます。
最新の学術情報をぜひご覧ください。

◎和文誌:木材学会誌 電子ジャーナル版
    https://www.jwrs.org/publish/mkz/

◎欧文誌:Journal of Wood Science 電子ジャーナル版
    https://www.jwrs.org/publish/jws/

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「ウッディエンス」では以下の欄に掲載する5行広告を募集します。
広告料は、年4回分で36,000円、1回分では¥10,000となります。
広告は日本木材学会の賛助会員からのみ受け付けます。
詳しくは末尾の広報委員会までメールでお問い合わせください。

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基礎編:定価2,600円 [会員価格 2,080 円]
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