会長挨拶
ごあいさつ
日本木材学会会長 土川 覚

このたび、一般社団法人日本木材学会・第34代会長を拝命しました土川 覚でございます。60年以上の歴史と伝統ある本会の会長という重責に、大きなプレッシャーを感じつつも精進して務めさせていただく所存です。さて、新型コロナウイルスによる影響で、世の中が大きく変わりました。何かと不便の多い今日ですが、この状況が一日も早く解消され、平穏な日々が戻ることをまずは祈念申し上げます。
木材学会は、1955年に設立された日本学術会議協力学術研究団体であります。元来、「学会」は「学術研究の進展・連絡などを目的として、研究者を中心に運営される団体」と定義されますが、本会は2010年に一般社団法人化された際の設立目的を、「木材をはじめとする林産物に関する学術および科学技術の振興を図り、社会の持続可能な発展に寄与すること」としており、木材学会誌やJournal of Wood Scienceの発行、学会賞等の顕彰制度、年次大会の開催に加え、支部活動(北海道、中部、中国・四国、九州)や研究会活動(17研究会)、メールマガジン「ウッディエンス」の配信、図書出版などを通して、木材に関する基礎および応用研究の推進と研究成果の社会への普及を図っています。
毎春開催の年次大会では、1,000名に近い参加者と約600件の発表で賑わいますが、2019年度(鳥取)および2020年度(東京)は、新型コロナウイルスによる影響でその開催形式が大きく変わりました。各支部大会や研究会活動も同様であり、研究発表や情報発信の方法・意義が改めて問われています。
木材学会誌には年間約25報、そしてJournal of Wood Scienceには年間約80報の論文が掲載されております。とくに後者の2020年のインパクトファクターは、完全オープンアクセス化の影響もあって2.170になりました。これまでの地道な研究成果の集積によって、国際的にも成熟した木材関連学術団体になりつつありますが、和文および英文それぞれの学術投稿誌が果たす役割と方向性をよく検討しながら歩みを進めるべきと考えます。
木質科学の領域でも、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の達成」と「脱炭素社会の構築」への貢献は、最優先で検討すべき課題であります。いずれも、産学官が一体となって取り組むべき地球規模の事項であり、木材学会のリーダーシップが大きな鍵になります。国連は、2030年までにSDGsを達成すると定めており、また、我が国としては、2050年脱炭素社会の実現を目指すことが掲げられました。それらを見据えて、関連企業や大学、公的機関との更なる共創・連携により、「木材に関する基礎および応用研究の推進と技術の向上・普及を通じてSDGs達成と脱炭素社会構築に資する」ことが強く望まれます。
今後とも、会員皆様のご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。