ごあいさつ

日本木材学会会長  福島 和彦
  

 この度、前 鮫島正浩会長から会長職を引き継ぎました。60余年の歴史と伝統を持つ日本木材学会の会長に就任し、身の引き締まる思いです。

 現在、我が国は、戦後の拡大造林による植林木が主伐期を迎え、その利用が強く求められています。また、地球温暖化の進行を極力抑えるために、世界が脱炭素社会に舵を切り、木材等循環資源の利用拡大が強く求められていることも事実です。昨年の「日本再興戦略」においても、林業・木材産業の成長産業化があげられており、新たな木材需要の創出にも触れられています。具体的には、公共建築物、商業施設、中高層建築物の木造・木質化を推進するため、“CLT”(直交集成板)、木質系耐火部材などの新たな木材製品の活用、あわせて、木質バイオマスの利用促進や、“セルロースナノファイバー”の国際標準化・製品化に向けた研究開発、木材の約3割を占める成分である“リグニン”を用いた高付加価値製品の研究開発を進めることが述べられています。このように、木材学における専門用語が政府の戦略のキーワードとなっており、木材産業に関連する研究開発は、今後の日本の将来を占う学問分野といっても過言ではないでしょう。さらに、木造・木質化の推進は、環境共生や大規模災害への備えといった今日的課題に対処する上でも有効と考えられており、緑豊かな日本の国土を後世に遺していく上でも重要です。こうした社会の要請に応えるべく、会員皆様のご協力のもと、我が国の木材産業・木材学の発展、次世代の担い手育成に努力して参ります。

 脱炭素社会を目指す産業構造の転換期にあっては、大学、国研、地独、公設試が有する優れた木材加工技術、バイオリファイナリー技術をいち早く社会に還元していくために、産学官連携推進を強化することが強く求められています。当学会としましては、木材業界との連携を密にするため、前期に引き続き産学官連携推進委員会を設置し、木材に関連する他の学協会との連携推進を維持・強化して参ります。また、木材産業を担う後継者を養成する目的の一環として、林産系以外の教育を受けてきた技術者向けのテキスト作成にも着手して参ります。また、木材利用推進こそが脱炭素社会・循環型社会構築への切り札であるという内容の提言書および一般向けのパンフレットを策定し、木材の魅力を発信していく所存です。

 最後に、国際化推進の取り組みについても触れさせていただきます。これまで、英文誌のJournal of Wood Scienceでは、優れた論文のオープンアクセス化を段階的に進めて参りましたが、近い将来、すべての論文をオープンアクセス化し国際情報発信強化を図っていく予定です。また、米国木材工学会(SWST)と日本木材学会との共同開催である2018 Joint Convention(2018年11月5-9日、名古屋大学で開催決定)を、皆様方のご協力のもと、大成功に導きたいと考えております。さらに、木材学会会員が中心となって企画・運営する日本開催の国際会議に対し、現在採択されております科研費「国際情報発信強化」事業補助金を使って支援を行って参りますので、誘致の段階から情報をお寄せいただければ幸いです。

 微力ではございますが、歴代会長はじめ先輩諸兄が築いてこられた日本木材学会の伝統を守り発展させていくために、全力を尽くす所存です。会員皆様方の倍旧のご支援ならびにご鞭撻を承りますよう心よりお願い申し上げます。

平成29年(2017年)8月吉日