ウッディエンス・メールマガジン

 

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■ ウッディエンス メールマガジン          2009/06/09  No. 012   
■                                    
■  木材の科学は日進月歩! 日本木材学会から最新の情報をお届けします  ■
                                     ■
                      発行 日本木材学会広報委員会 ■
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                    日本木材学会広報委員会委員長 林知行
                                                         広報委員長のブログ
                                 http://koho.cocolog-nifty.com/blog/
★6月16日追加事項

昨日(6月15日)にEメールで配布したメールマガジンの一部に文字化けがあり
ました。

 大橋義徳氏の名前の一部が奇妙な文字列で表示されていました。

 大変申し訳ありません。お詫び申し上げます。


■本号の目次■

・本号では、2008年度日本木材学会賞,同奨励賞,同地域学術振興賞、同技術賞,
同論文賞を受賞された方々の受賞の声を掲載します。  なお、未掲載の方について
は、原稿が届き次第、次号以降に掲載します。 
 
◆第49回日本木材学会賞
 『セルロース系ナノ材料の開発 』
                 矢野 浩之(京都大学生存圏研究所)

◆第20回日本木材学会奨励賞
 『構造用合板の面内せん断疲労における破壊基準と寿命の評価』
                 杉本 貴紀(愛知県産業技術研究所)

◆第17回日本木材学会地域学術振興賞
『四国地域の木材材質研究による木材の有効利用における地域貢献』
            藤原 新二(高知大学教育研究部自然科学系農学部門)

◆第2回 日本木材学会論文賞
『道産材を用いた木質 I 形梁の力学特性(第2報)曲げクリープ特性』,
 木材学会誌,54 巻4 号
               大橋 義コ(北海道立林産試験場)
	             松本 和茂(北海道立林産試験場) 	
	             佐藤 司 (北海道立林産試験場) 	
	             平井 卓郎(北海道大学大学院農学研究院)
	 	
◆第2回 日本木材学会論文賞
『Quantification of visual inducement of knots by eye-tracking』,
 Journal of Wood Science, Vol. 54, No. 1
                             仲村 匡司(京都大学大学院農学研究科) 
	             近藤 孝之(京都大学大学院農学研究科)

◆第2回 日本木材学会論文賞
『Effect of decay on shear performance of dowel-type timber joint』,
 Journal of Wood Science, Vol. 54, No. 5 	
					
	           澤田 圭(北海道大学大学院農学研究院)
	           佐々木 貴信(秋田県立大学木材高度加工研究所)
	           土居 修一(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
	           飯島 泰男(秋田県立大学木材高度加工研究所)


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◆第49回日本木材学会賞
 『セルロース系ナノ材料の開発 』
                 矢野 浩之(京都大学生存圏研究所)
 樹木は小さなタネにはじまり、やがて地球上で最も巨大な生き物となります。最も
大きな樹木は100 mを越え、それは30階建てのビルディングを優に越える高さです。
植物が陸上に上がったのは、今から5億年ほど前のことだそうですが、その後、決して
快適とは言えない厳しい環境の中で樹木は種(シュ)を繋いできました。その結果、
現在では、バイオマスの大部分を占めるに至っています。私は、この樹木の圧倒的な
存在感を拠り所に新しい材料開発を進めています。
 特に、最近は、植物細胞壁の基本骨格物質である、セルロースミクロフィブリル束
をベースとした複合材料の開発に取り組んでいます。研究の始まりは1990年代の
中頃。最初に、樹脂含浸圧密化木材においてセルロースミクロフィブリルの強度的ポ
テンシャルを明らかにしました。続いて、それを基に、ミクロフィブリル化セルロー
スやバクテリアセルロースを補強繊維とした軽量・高強度のナノ複合材料を開発しま
した。さらに、ナノファイバーのサイズ効果に基づく透明補強により、ガラスに匹敵
する低熱膨張でありながら曲げられる透明ナノ複合材料を開発しました。これらの一
連の研究が、これまでのセルロース系材料、木質系材料になかった新領域「セルロー
ス系ナノ材料」を開拓し、持続型社会構築に向けた植物資源材料の新たな可能性を示
したという評価をいただき、今回、栄えある日本木材学会賞をいただくことになりま
した。一緒に研究を進めてきた多くの若い研究者の皆さんのお陰と深く感謝していま
す。また、授与式が、奇しくも私の故郷である松本において開催された年次大会であ
ったことは、特に心に深く残るものでした。
 さて、生物は周囲の環境と微妙なバランスを取りながら出来上がってきた非常に完
成度の高い、しなやかなシステムです。したがって、バイオマス資源を用いた材料開
発では生物が長い進化の過程で必然的に創りだした構造を、その必然を損なうことな
く形を変えて行くことが重要だと考えます。別の言い方をしますと、原料からスター
トして、その必然にそって材料を作っていくと、大きな流れの所々に流れを堰き止め
る障害が存在します。それを取り除く方途が生物材料の開発研究では無いかと考えて
います。今後は、このことを生物資源利用の基本スタンスとして示すことができれば
と思っています。また、最近は、セルロースミクロフィブリル束やキチンナノファイ
バーといった生物の基本骨格物質をベースにした材料開発を進める中で、生物材料の
特性や機能には、作り手である生物が辿ってきた環境や育ってきた環境が色濃く反映
されている、ということを思うようになってきました。このことを材料開発を通じて
明らかにすることが出来ればうれしく思います。今後とも、ご支援、ご指導の程、よ
ろしくお願い致します。
  
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◆第20回日本木材学会奨励賞
 『構造用合板の面内せん断疲労における破壊基準と寿命の評価』
                 杉本 貴紀(愛知県産業技術研究所)

 地球温暖化や廃棄物の累積などの環境問題を背景として、木造住宅に関しては平均
使用年数の長寿命化が求められております。住宅に用いられる木質系材料は、地震や
台風によって繰り返し負荷を受け、使用年数とともに必然的に受ける負荷回数も増加
します。従って安全な長寿命木造住宅を実現するためには、木質系材料の強度性能に
及ぼす繰り返し負荷の影響を検討し、材料の疲労特性を表す負荷の大きさ(応力レベ
ル)と疲労寿命との関係(S-N線)等を把握する必要があります。また、金属など他
の工業材料と異なり木質系材料は粘弾性的性質を有するため、繰り返し負荷に対する
力学的挙動は取り扱いが複雑です。
 そこで私たちは、木造住宅の耐力壁などに用いられ、耐力要素として不可欠な構造
用合板について、地震や風圧による繰り返し面内せん断力に対する力学挙動を実証す
るとともに、様々な負荷条件下における疲労挙動を検討しました。
地震や風圧による面内せん断力は、負荷の波形・周波数や大きさが様々であることを
考慮して、複数の負荷波形・周波数を設定し、それぞれの負荷条件において構造用合
板の面内せん断疲労試験を行いました。その結果、構造用合板の疲労寿命は負荷波形
・負荷周波数の影響を顕著に受け、S-N線は負荷条件によって異なることが明らかと
なりました。このため、S-N線に代わる材料の疲労特性を、個々の負荷条件に依存し
ない普遍的な形で示す必要があります。私たちは、負荷1回毎に材料に与えられるひ
ずみエネルギーに着目して疲労挙動の定量的な解析を行い、疲労寿命と疲労破壊まで
のひずみエネルギーの累積値との間に種々の負荷条件に共通な関係、すなわち材料固
有の疲労破壊基準を見出しました。
 また、外力が時間とともに不規則に変動することを考慮して、疲労試験途中で負荷
条件を一度変更する変動荷重試験を行いました。変動荷重下での材料の疲労寿命を算
出する累積被害則として一般的なマイナー則の適用を試みましたが、実験結果はマイ
ナー則では説明できませんでした。そこで、マイナー則を修正して新たな累積被害則
を提案し、変動荷重下での構造用合板の疲労寿命が新たな法則にほぼ従うことを明ら
かにしました。

◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm012/sugimoto.pdf 

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◆第17回日本木材学会地域学術振興賞
「地域学術振興賞を受賞して」
             藤原 新二(高知大学教育研究部自然科学系農学部門)

 このたび「四国地域の木材材質研究による木材の有効利用における地域貢献」により
日本木材学会地域学術振興賞をいただくことができました。これもひとえに、ご指導、
ご支援を賜りました関係各位のお陰であり厚くお礼申し上げます。
 四国地方は全国と比べ、森林率(香川県を除く四国3県の平均:76.7%、全国平均:
67%)および人工林率(香川県を除く四国3県平均:62.7%、全国平均:41%)共に
高く、昔から愛媛の久万林業、徳島の木頭林業のような有名な林業地が発達してきま
した。この特徴ある施業をしている林業地(国有林施業体系の高知県安芸地方、粗植
粗放の普通伐期施業の徳島県木頭地方、密植集約短伐期施業の愛媛県久万地方)を選
び、保育形式と木材の材質(年輪幅、密度、仮道管長、強度、節の現れ方等)との関
係について調査してきました。
 また林業が盛んな四国の中でも、高知県は森林率が84%と、全国一位の森林率であ
ります。森林率全国一位ということは、これまでは山しかないというマイナスのイメ
ージが強かったわけですが、現在は価値観を転換して豊かな森林資源を生かして、地
球温暖化対策と地域経済の活性化に生かそうという取り組みが行われています。その
取組みの一環として、間伐の促進と木質バイオマスの活用があげられます。放置され
た人工林を効率的に整備し収入を得るとともに、森林の機能向上を図りながら長伐期
施業に移行するために、間伐率を高めた強度間伐が実施されるようになってきました。
しかし、強度間伐は間伐後の風害や虫害の発生、残存木の枯死、あるいは材質や収量
の低下などが懸念されています。これらの問題を解明し、適正な森林管理技術を確立
するための一環として、強度間伐による材質への影響について研究を行っています。
すなわち、いろいろな程度の間伐率と間伐方法、例えば通常の伐採する方法から巻枯
らし間伐といった間伐の違いが材質に与える影響について研究を進めています。
 高知県の魚梁瀬地域には天然スギが生育しており、古くから優良材として利用され
ており、その実生苗も広く植林されています。しかし、その品種としての材質は不明
であったため、材質の変動範囲と特徴を明らかにしてきました。
 さらに、最近の林業におけるもう一つの重要テーマとして、温暖化が木材の成長あ
るいは材質にどのような影響を与えるかということがあげられます。長期間の変動を
調べるには高樹齢の樹木が必要になりますが、魚梁瀬スギの天然木は樹齢が300年前
後ですので、この種の研究には適したサンプルであります。先ずは、温暖化前後で成
長や材質(特に密度や組織構造)がどのようになっているのか検証してみようという
ことで研究を行っています。
 今後とも、木材の研究を通して、地域に貢献できれば幸いです。

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◆第2回 日本木材学会論文賞
『道産材を用いた木質 I 形梁の力学特性(第2報)曲げクリープ特性』,
 木材学会誌,54 巻4 号
                    大橋 義コ(北海道立林産試験場)
	             松本 和茂(北海道立林産試験場) 	
	             佐藤 司 (北海道立林産試験場) 	
	             平井 卓郎(北海道大学大学院農学研究院)


                       大橋義コ(北海道立林産試験場)

 この度は,私共の論文に論文賞を授与いただきまして,誠にありがとうございまし
た。著者を代表して御礼申し上げます。
 本論文は,北海道産のトドマツ製材とカラマツ合板を用いた木質T形梁の実用化研
究の一環として,曲げクリープ特性について論述したものです。軸材料と面材料を接
着により組み立てた木質T形梁は,各構成部材の力学的な役割が明確で合理的な断面
形状を持ち,軽量かつ寸法安定性に優れた構造材料です。面材料の特性により梁せい
方向の乾燥収縮量が小さく,施工後の住宅床組の乾燥収縮に伴う瑕疵やクレームの防
止に有効な材料とされ,枠組壁工法が新築木造住宅の3割を超える北海道では,210材
等の梁せいの大きな構造用製材の代替材として需要が増えつつあります。北林産試で
は,地域の建築業界や林産業界からの要望を受けて,地域産材を用いた木質T形梁を
開発してきました。新しい構造材料を実際に利用していくためには様々な力学的特性
を明らかにする必要がありますが,居室の床組を構成する横架材としては,長期荷重
によるクリープ特性を把握することが居住性を確保する上でも重要となります。特に
,木質材料では水分変動下でメカノソープティブ変形と呼ばれる顕著な変形増大や特
異的な変動が生じるとされています。そこで,温湿度変動条件下で調湿条件の異なる
試験体を用いて実大曲げクリープ試験を行いました。6年間の試験結果から,試験前
の調湿条件が数年間にわたり含水率と変形挙動に大きな影響を及ぼすことが明らかと
なりました。また,長期たわみの予測方法を検討し,精度の高い予測値を得るととも
に,設計・施工上の留意点を明らかにすることができました。今回の試験は限定され
た条件で行ったものではありますが,得られた結果が木質構造材料の研究・開発にわ
ずかでも役立つことができれば,大変幸いです。
 なお,研究実施にあたり,宮崎県木材利用技術センターの荒武志朗博士,京都大学
生存圏研究所の森拓郎助教の研究を大いに参考にさせていただきました。また,試験
実施には,北海道内の建築関係者の方々,林産試験場の職員に多くのご協力をいただ
きました。そして,今回の論文の審査員の先生方からは,懇切なるご指導とともに,
今後の励みとなります温かいお言葉もいただきました。ご指導・ご支援いただきまし
た皆様に心から感謝申し上げます。

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◆第2回 日本木材学会論文賞
『Quantification of visual inducement of knots by eye-tracking』,
 Journal of Wood Science, Vol. 54, No. 1
                             仲村 匡司(京都大学大学院農学研究科)	
   近藤 孝之(京都大学大学院農学研究科,現日本ヒューレット・パッカード)

人は節を見ているのか?〜視線追跡による節の誘目性の数量化〜
                    仲村匡司(京都大学大学院農学研究科)

 Journal of Wood Science, 58, 22-27 (2008)に掲載されました上記論文に対して,
第2回論文賞を頂戴しました.誠に光栄であり,また,今後の研究活動への大きな励
みとなります.
 著者の仲村は,かつて卒業論文で「有節材の見た目の印象」というテーマに取り組
んだことがあり,以来,節の見えに対して並々ならぬ関心を抱いております.例えば
,“地元の木で建てた”いわゆる産直住宅の中には,これ見よがしに節があらわしに
なっている場合があります.しかし,そういう節の見せ方は決して万人受けするわけ
ではありません.では,節の何が嫌われたり好まれたりするのでしょうか? そもそ
も我々は節を見ているのでしょうか? 節という木材ならではの特徴を,自分と同じ
ように隣人も見ているのでしょうか? このあたりに本論文の出発点があります.
 幸い,人の視線の動きをとらえるアイ・トラッカーや,様々な有節壁面パネル画像
を等倍で表示できる大型液晶モニタを手に入れることができ,何より,共著者の近藤
君という強力なマンパワーを得て,実験がスタートしました.そして,やっぱり人の
視線はしっかり節に吸い寄せられることを,初めて直接的かつ定量的に示すことがで
きました.
 論文のような紙メディアと異なり,Webのよいところは動画をお見せできることです.
有節壁面パネル画像を自由に観察するある被験者の視線の動きをご確認下さい.面白
いように節部に視線が留まることをおわかりいただけると思います.
 一連の実験では,視線追跡だけではなく,有節壁面パネル画像の見えに関する主観
評価も被験者に行わせており,節の主観的な目立ちと節部への視線の停留時間との間
に高い正の相関関係があることを見出しました.では,節が目立つから見入ってしま
うのか? それとも,節を見るから目立つように感じるのか? まるで「ニワトリと
卵」の議論ですが,節の誘目性と主観的な目立ちの関係は「後先」ではなく,恐らく
「相補的」であり,そのことが節の見た目の特徴としての強さ(Visual impact)につ
ながっているのだろうと推測しています.また,その強さを制御することが,有節材
を利用した製品の視覚デザインにつながるのではないかと期待しております.
 詳細は論文をご一読いただきたく思いますが,もの見る人の性癖をこっそりのぞき
見するような研究に対して賞をいただいたようで,著者ふたりはよいのかなぁと恐縮
しつつ,ニンマリと顔を見合わせているところです.
 最後にこの場を借りて,本研究を進める上でお世話になった方々に謝辞を述べさせ
ていただきます.岩永光一先生(千葉大学大学院自然科学研究科)の科研費研究班に
加えていただいたことで,本研究を遂行できました.堀内嘉久氏((有)ホーテック 
http://www.hootec.jp/ )からは,節の大きさを揃える無理難題にもかかわらず美麗
な吉野杉のラミナを提供いただきました.多数の学生諸君に被験者として協力いただ
きました.その他にも,陰に日向に多くの方々から協力をいただきました.みなさま,
ありがとうございました.

◇動画は下記のリンクからご覧ください。
(6月11日現在、調整中です。ブラウザによっては見えないことがあります。)
 動画の表示

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◆第2回 日本木材学会論文賞
『Effect of decay on shear performance of dowel-type timber joint』,
 Journal of Wood Science, Vol. 54, No. 5 	
					
	           澤田 圭(北海道大学大学院農学研究院)
	           佐々木 貴信(秋田県立大学木材高度加工研究所)
	           土居 修一(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
	           飯島 泰男(秋田県立大学木材高度加工研究所)

腐朽が木質構造ドリフトピン接合部のせん断性能に及ぼす影響
                 澤田 圭(北海道大学大学院農学研究院)

 供用期間中の構造物には安全性や機能の有用性・継続性等が要求されます。構造物
におけるこのような基本的性能は、初期設計の段階では確認されていても、供用期間
中に受ける温度、水分、紫外線等の影響によって構造材料に劣化が引き起こされ、構
造物の性能が大きく変化する可能性があります。
 木質構造物における代表的な劣化としては腐朽が挙げられます。木材が乾燥しにく
く水分が供給されやすい場所に置かれた場合、その木材には腐朽が生じやすくなりま
す。腐朽と木材強度の関係についてはこれまで多くの研究が行われており、腐朽が発
生することで木材の強度は急減に低下することが知られています。このような既往の
研究成果は主として小試験体を用いた材料試験によって得られてきました。
 木質構造物に対する腐朽の影響を考える場合、部材の強度だけでなく接合部の性能
についても考える必要があります。それは構造物の構造性能は一般的に接合部の性能
によって大きく左右されるためです。そのため木質構造物の接合部分に腐朽が生じた
場合、その腐朽が局所的であっても構造物の性能に大きな影響を与える可能性が考え
られます。しかし腐朽が木質構造接合部の性能に与える影響については十分なデータ
の蓄積がありません。
 このような背景から、本研究では先孔部分に生じた腐朽が木質構造ドリフトピン接
合部のせん断性能に及ぼす影響を調べました。腐朽材は実験室内で強制腐朽処理した
木材を用いました。実験結果より、腐朽はドリフトピン接合部のせん断性能を大きく
低下させ、特に初期変形時の荷重−変形関係に大きな影響を及ぼすことが分かりまし
た。また繰り返し加力を受けるドリフトピン接合部に腐朽が生じている場合、接合部
のせん断力は低下し、木材のめりこみ変形は回復できず、履歴ループの面積は小さく
なるため、外力に対してほとんど抵抗できないことが示されました。
 以上が第2回日本木材学会論文賞を受賞させていただきました論文の背景と概要で
す。今回の受賞はこれから研究を進めるうえで励みになり、また身の引き締まる思い
を感じています。実験を遂行し、論文としてまとめるまでにいろいろな方からご協力
を頂きました。また論文審査員の方々からも貴重なご助言を頂きました。多くの方々
のお力添えに大変感謝しています。
   
◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm012/sawada.pdf 

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書評 有馬孝禮著
なぜ、いま木の建築なのか (単行本)  223ページ
出版社: 学芸出版社 (2009/4/30)
ISBN-10: 4761524588
ISBN-13: 978-4761524586
発売日: 2009/4/30
            原田真樹((独)森林総合研究所 構造利用研究領域)評
 「木材」という材料を、将来に亘って持続可能な資源として確立するために何をな
 すべきか、本書はこのことについて考えるための書である。また、筆者の言を借り
 れば、『今までの常識をいったん置いて、「もうひとつの木材を考える」きっかけ
 となる』本である。
 従って、知識を体系立てて説明する教科書というよりはむしろ、著者の考え・哲
学を盛り込んだ啓蒙書、といった方が位置づけとしては適当であろうか。
 本書は、大きく分けて、第1章:日本の木を知っていますか、第2章:木の「強い
 」「弱い」とは、第3章:木材・木造とのつきあいは水とのつきあい、第4章:ス
 トックとしての木造建築、第5章:育てて使う連携、第6章:地球温暖化防止対策
 における森林・木材・木造、の6つのパートから構成されている。各章の概要は以
 下の通りである。
 
◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm012/harad.pdf 

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学術情報をぜひご覧ください。
◎和文誌:木材学会誌 電子ジャーナル版
    http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwrs/-char/ja/

◎欧文誌: Journal of Wood Science 電子ジャーナル版
    http://www.springerlink.com/content/1611-4663/
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